暑いですね


「暑い死ぬ。溶け死ぬ」

 ミンミンと夏特有の効果音が頭の中をごちゃごちゃと掻き乱す。解き途中の課題プリントなんてとっくに机の端に移動済みだ。

「暑い言うな暑くなる。涼しいって言え涼しいって」

 良くこんな中課題なんて出来るな。
 やけを起こしたのかどうかは分からないけれど、ガリガリと狂ったようにシャーペンを動かす彼をストロー片手にぼーっと眺めた。

「涼しい死ぬ。涼し死ぬ」
「殴るぞテメェ」
「暴力はんたーい」
「上等だこら」
「うわっ近寄んなこら。余計暑くなるわ」

 しっしっと手を振りつつ机の上に項垂れる。机の向こう側からこっちに移動してきた彼がピタリとくっついてきて、ああもう余計暑い。机の下を潜り今度は彼が居た机の向こう側へと私が座る。
 それにしても何でこの部屋には扇風機もエアコンも無いんだ。頼りになるのは手で作った簡易的団扇だけ。……ああもう!

「暑い死ぬ。溶け死ぬ」
「だから……!」


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(きっとまた来年もその後もずっと)(こうやってグダグダ過ごすんだろうな)