試験爆発しろ
「あ、何か今めっちゃ空飛びたい。空」
「馬鹿なこと言ってないで試験勉強してください」
椅子の上に立ち上がり教室の窓を勢い良く開け、そのまま飛び出そうとしたら全力で止められた。しぶしぶ椅子に座り問題集とご対面する。彼の手によってつらつらと書き進められていく理解不能な文字列をじっと見つめていたら、何だか頭が痛くなってきた。
「あ、教室の壁一面に空の絵描いてジャンプしたらさ、空飛んだことになるんじゃね? 結論的に空飛んだことになるよね? うんなるよきっとよっしゃ! ちょっとペンキ用意してくる」
「待ちなさいコラ」
砂煙が起きそうなぐらいに華麗なスタートダッシュを決めたにも関わらず、首根っこを簡単に掴まれ「ぐえ、」とカエルが潰れたような声が口から漏れ出した。いや実際にカエルを潰したことは無いんだけども。
「だって分かるはずも無い問題ずっと見せられても解けるはずがないじゃないですか田中君」
「僕苗字鈴木なんですけど。分かる分からない云々よりもただ単純に解こうとしていないだけなんじゃないんですか加藤さん」
「あー皆でストライキ起こしてー」
「聞けよ」
机に腕を乗せて枕にしつつ、プリントの隅にて落書きゾーンを作り出してみる。後頭部を叩かれたけれどめげずに教師の似顔絵を描いたら「くっ」と笑いを堪えるような声が聞こえてきた。よっしゃ。
「上手くね? 私上手くね? 後退し始めてるこのうっすい髪とかもうプロ級じゃね?」
「止めなさいってば……くく」
「そう言いながら佐藤君も書き足してるじゃないか」
「僕苗字鈴木なんですけど。こうすればもっと……」
グリグリと鼻を付け足され始めた絵を見て思わず盛大に吹き出してしまった。ちくしょうこんなので。
「それ先生って言うか最早地球外生命体じゃね? 人間とイノシシと猿その他もろもろを無理やり合成したらこんな生き物になっちゃいましたみたいな顔してるぞこいつ。こうすればきっと……」
「あ、何するんですか。だったらこうした方が……」
「あああそれ良い! 凄い良い! どことなく似てきた!」
「おーお前ら勉強熱心だな。どれ、先生に見せてみろ」
「……え?」
職員室にて一時間経過。
(勿論現在進行中)
「……山田くんのせいだ」
「だから僕苗字鈴木ですってば」