AM 8:00
「お嬢様。失礼致しまス」
二、三度ノックし、返ってくることがない返事を数秒待ってから、なるべく音を立てないように気を付け軋む木の扉を開いた。
朝食を乗せたワゴンを先に部屋の中に通し、続いて自分自身も持ち手を押しながら入室する。
「今日の朝食はクルミパンとコーンスープでス。まだスープがお熱いのデ、良く冷ましてからお召し上がリください」
フードカバーを取り除き彼女を見れば、純白なベッドの上、上半身を枕に預け起き上がっていた。僕よりも細く、そして程よく伸びた腕が布団の上に乗せられていて、まるで一体化しているように肌が美しく白い。
すぐ下に影を落としてしまうぐらいに長い睫毛が目元を丁寧に縁っており、その整った部位に見合うような柔らかな笑みを浮かべてこちらに顔を向けていた。
湯気が上がり向こう側の景色を歪ませて見せる二品を、ベッドのすぐ側に設置されてある簡易的な机の上に置き、ついでにとすぐ近くの窓を開け放つ。
と、カーテンと共に数羽の小鳥が部屋の中に舞って入ってきた。
「おやおヤ。可愛らしいでスね」
食器の縁に屯った青い小鳥達にそっと手を差し出すと、彼らは顔を見合わせ、戸惑いながらもくちばしで指先を小突いてきた。
触覚は未だきちんと機能しているようで、不思議そうに啄み続ける擽ったさとその小さな姿に少し笑う。
「では、僕は調べ物をしていますのデ。何かありましたらそこの呼び鈴でお呼びくだサい」
失礼しますとその場から離れれば、驚いた小鳥達が彼女の肩や頭、膝の上に次々と留まる。何だか困っているような、そんな彼女の微笑ましい姿に再度口元が緩み、片手でそれを隠しながらも「ごゆっくり」と扉を閉めた。