PM 2:00


「……こラ、スイレン。またサボっているんですネ」

 絨毯とまではいかないけれど、花に紛れて桜色がちらほらと見かけることが出来る程の距離……お嬢様からはそう遠くない場所まで移動すれば、同僚であり、僕の友達でもあるアンドロイドが何もせずにただ寝転がっていた。

 彼は僕が見よう見まねで作り出した物で、そのせいか僕をそのまま生き写したような外見になってしまっている。
 僕が生み出す物はどうやら心が分け与えられているように伝染っていくようで、彼もまたその内の一人だ。

 あえて違いを挙げるとするならば、髪と瞳の色、それと思考の違いぐらいか。
 全体的に青がかった白い色をしている僕とは対照的に、彼は名前に反してとにかく赤い。髪も服も瞳も、視覚的なものはほぼ全て。

「全ク、この辺りの植物の管理を任せていたはずなのに。
……これなんか蔦が伸び放題ではないでスか、もう……」

 彼の腕に巻きついていた蔦を取り除き、そっと頬に手を添える。深く眠っているようで瞳は固く閉じてられており、僕が触れても全くもって起きる気配が無かった。

「……早く起きて仕事をしテくださいね。
それまデは僕がきちんとこなしておいてあげますカら」

 髪を軽くとかしてから、立ち上がり桜の木の方角を見る。早く戻らなければ。
 彼女の元へ向かう帰り道、風に乗って誰かの声が流れてきたような気がした。
 試しに後ろを振り返ってみても、スイレンがただ横たわっているだけで、特に変わった様子は見当たらずに首を傾げる。……気のせいか。