PM 4:00


「また食事を残しテ……大体あなたはいつモいつも……あ」

 車椅子を押しながら長々と説教じみた話をしていると、いつの間にか書斎の前に辿りついた。
 例のごとく動物に分け与えられていた昼食を泣く泣く片付けるついでに、一度屋敷に戻り本でも読もうと提案し今に至る。車椅子を止め見慣れた扉を開くと、今日僕が読んでいた本の山が一番に目に付いてしまった。

「あ、ああ! すみません、すぐに片付けますノで!」

 慌てて謝りながら本を片付けようと一息に持てば、高すぎる山が耐え切れず崩れ落ち埃が舞う。再度謝り、今度は少しづつ持ち運びながら彼女の方を盗み見れば、怒った様子はなくいつも通り微笑んでいた。

「……これでヨし。すみません、騒がしくしてしマって」

 医学の本達を全て本棚に収めれば、机の上にやっと空間出来上がった。
 車椅子ごと机の前に移動させ、彼女好みであろう童話や神話が描かれた物語を目の前に次々と積み重ねていく。

「……僕も少し調べ物をしていまスね。ごゆっくりお楽しみクださい」

 片付けた本とはまた別の本棚まで歩み寄り、やはり医学の本を選抜して取り出す。勿論、お嬢様の喉と手足を治すためだ。
 近頃症状が更に酷くなったらしく、一刻も早く和らげて差し上げないといけない。

 ……こうして調べ物をするのが日課となったのはいつからだろうか。書斎を初めて見つけた時から随分と長い時間が経ったような、ふとそんなことを思案して、すぐに考えるのを止めた。

 早く治す方法を見つけ出さなければ。